ペーターズギャラリーコンペ2005 受賞者のお知らせ

この度はペーターズギャラリーコンペ2005にご応募頂きありがとうございました。
小さなギャラリーのコンペながら、たくさんのご応募がありスタッフ一同大変うれしく思っております。
審査結果をご報告させていただきます。

応募人数…573名 (応募総点数1566点)
受賞者…3名(各審査員がひとりを選び、今回は初のダブル賞が出ました。)
井筒啓之賞・祖父江 慎賞…佐藤昌美(埼玉)  
めぐろみよ賞…小林宏光(神奈川)
嘉藤恵子賞…原口展幸(埼玉) (敬称略順不同)


■審査を終えて各審査員の声と最終選考対象者

井筒啓之賞/佐藤昌美(埼玉)
以前見たときよりも、和紙と墨を使い始めてから、作品がすごくよくなっています。
画材との出会いというのは、絵を描く人間にとってとても幸せなことなので、この調子でどんどん精進していってください。

井筒啓之さん総評

まだ自分の力がわからずに出している人と、自分の実力をきちんと理解している人との違いがはっきりしていました。
最初は応募された作品全体のレベルが見えてこなかったので戸惑いながら選びましたが、見ているうちに実力がわかってきて、20〜30点にしぼった段階で
は、もうどの人もプロとしてやっていけるのではというような作品ばかりだったと思います。
最終選考まで残った人たちは、本当にどれに賞をあげてもいいくらい僕は好きな作品ばかりでした。

最終選考者
和田 純(東京)、西山亜紀(東京)、大畑伸太郎(埼玉)、上路ナオ子(神奈川)、黒田 諭(埼玉)、河村マチコ(大阪)、あずみ虫(神奈川)、菅野裕美(埼玉)、大倉朋子(千葉)、吉實 恵(東京)

 
祖父江慎賞/佐藤昌美(埼玉)
これからの楽しみが一番多そうな人を選びました。
ねらいのある絵が多かったなか、素直で欲のない感じに好感を持ちました。
ただ、うまいはずなのにうまい絵がない、という不安なところがありますね。
でもまたそこが魅力的でもあります。
まだいい絵が描けていないことは残念なことですが、必ずいい絵が描けるようになる気配が漂っています。
すぐにプロになろうと思わずに、このまま描き進めていってください。

祖父江慎さん総評

コンペのときって、最初に見た瞬間に「こりゃダメだ」という人が多いものなんですが、そういう点で、いい意味でも悪い意味でも、今回はレベルが高かったです。
ほとんどの人が、そのまま仕事としてのイラストを描いていけそうでした。
仕事で絵をお願いする場合、シチュエーションによってイラストレーターを選ばせていただいてるので、今回のように「一人だけ」って言うのはホント選びづらかったですね。
全体の印象としては、さすがにイラスト好きな人からの応募が多いせいか、「人」を描くというよりは「自分のタッチ」を描いている人が多かったのが残念でした。
「人」には、なかなか出会えずに、タッチにばかり出会ったって感じです。
絵は達者なのに、「こういうバリエーションが描けます」とか「こんな絵が、今は受けると思います」というような声が聞こえてきそうな、たいくつな絵が多かったのも気になりました。
そんな絵は、意図的に外しました。
すぐに仕事が出来そうなうまい人が、今回すごく多かったんだけど、そういう絵ってプロ止まりなんですよね。
プロの人の絵が面白いかというと、必ずしもそうではないでしょ。

最終選考者
長野ともこ(東京)、福山彩子(東京)、手島康子(埼玉)、七字由布(埼玉)、渡辺恵美(東京)、嶋田陽子(東京)、斉藤涼(山梨)、清水彩子(東京)、門倉直子(千葉)、君野カヨ子(神奈川)、戸祭睦美(神奈川)、花房直美(千葉)、長光雅世(東京)、竹松勇二(東京)

 
めぐろみよ賞…小林宏光(神奈川)
構図がすごく洗練されていますね。広がりがありながらもきちんとまとまっています。
黒をはじめとして色の入り方もイヤらしくなくていいですね。
絵に偉ぶったところがないのもまた魅力的でした。
全体的に、大胆な部分と緊張感のある部分とが絶妙なバランスで保たれていて、たとえばカーラーや髪など、細かいところまで雑に描かずに気を抜いていないところに繊細さを感じます。
二枚とも「ハサミ」が共通のモチーフになっているんですね。その視点やセンスはやっぱり「造園」という職業から来るものなのかな。
職業もステキです。

めぐろみよさん総評

まず率直に楽しかったです。
皆さんそれぞれに独自の世界を感じました。
プロとして仕事している人に比べて、その「世界」に強さがあって、かえって新鮮な体験をさせてもらいました。

最終選考者
おちあやこ(東京)、柴田ケイコ(高知)、タマキユキコ(東京)、佐藤紀子(東京)、山田宜広(東京)、宮崎明子(東京)、みずうちさとみ(東京)

 
嘉藤恵子賞…原口展幸(埼玉)
最初見たときに「これに決まり!」という感じがあり、全作品を拝見した後も、どうしても原口さんの5点で目が止まってしまいました。
イヤミな部分が全くなく素直に描かれていて、なおかつ真面目に取り組んでいる姿勢が伝わってきた気持ちのよい作品です。
見ていてホっとする、楽しくなれる。というイラストレーションに大切な条件が備わっているし、何を描いてもこの人の世界になると思います。
これ以上、上手くても下手でもダメ。この感じのまま描いていってください。

嘉藤恵子さん総評

全体的なレベルは高いのですが、どこかで見たことがある感じのイラストレーションが多かったことが残念です。
また人物というテーマにもかかわらず、自分が見せたい作品を出したという方が多かったように見えました。
イラストレーションは意味を伝えるという役割を担っています。
テーマが伝わってこないものはイラストレーションとして機能していないということであり、画面の中に具体的な人物が描かれていなかったとしても、人物を感じさせることができないとダメなのです。
イラストレーターの「個性」は、たくさん描くことで発見し形成されてゆくものだと思います。
「描くことが好き」なのは既にイラストレーターとしての素質があるということなので、一枚でも多く描くこと、より多くのものと出会い自分を高めることを常に意識していただきたいと思います。頑張ってください。
追記:多数の作品が集まるコンペの時は特にプレゼンテーションの仕方によって印象が変わるので「自分の作品をいかによく見せるか」ということをもっと意識してみてください。

最終選考者
佐藤紀子(東京)、米原薫(東京)、木村千賀子(東京)、多田順(東京)、山下アキ(長崎)、小林宏光(神奈川)、深海武範(東京)、あずみ虫(神奈川)


■審査員プロフィール

井筒啓之
 (イラストレーター)
1955年香川県生まれ、東京育ち。長沢節に師事。'82年日本イラストレーション展入選。'98年講談社出版文化賞。'00年クリエイションギャラリーG8にて個展。東京イラストレーターズソサエティ会員。
浅田次郎著「鉄道員(ぽっぽや)」酒井順子著「負け犬の遠吠え」、柳美里著「8月の果て」等の装画。著書に歌画集「ブルーシンジケート」。
 
祖父江 慎
(グラフィックデザイナー)
1959年愛知県生まれ。'79年多摩美術大学グラフィックデザイン科入学、'81年中退。 フリーとなる。
'90年コズフィッシュ設立、代表に。人文書から漫画まで本のデザインを中心に、広告やグッズデザインの仕事を行なう。主なブックデザインに『伝染るんです。』(吉田戦車)や『どすこい(仮)』(京極夏彦)がある。'97年 講談社出版文化賞ブックデザイン賞受賞、'03年 造本装幀コンクール文部科学大臣賞受賞。
 
めぐろみよ
(イラストレータ−)
新潟県生まれ。テキスタイルデザイナーを経て、セツ・モードセミナーを卒業。女性誌や広告のイラスト、本の装幀画などで活躍するほか、エッセイやオブジェ制作、パレットクラブスクールの講師も手掛ける。4月よりNHKでスタートする新番組「住まい自分流〜DIY入門」のテキストでは、女性でも簡単に作れる手作りインテリアを、楽しい作り方イラストとともに毎号披露する。
「どんな作品が集まるか今からとてもワクワク楽しみです。」
 
嘉藤恵子
(編集と企画)
広告代理店で制作の仕事を経て玄光社入社。「コマーシャル・フォト」や「イラストレーション」誌の編集に携った後、若い才能を育てることを目標にパレットクラブスクールで企画運営を担当。'05年6月から原宿ペーターズギャラリーに於いて、モノづくりをたのしむための学校をスタートさせる。
「どんな画材でも技法でもよいのです。あなたらしいあなたにしか描けないものを見せてください。」
 

2005年現在



 
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