ペーターズギャラリーコンペ2012 受賞者のお知らせ

ペーターズギャラリーコンペ2012にご応募頂いた皆様 ありがとうございました。
審査の結果をご報告します。

テーマ「人」。人物を題材にしたイラストレーショ ン。
サイズ B3サイズまで。点数制限なし、画材自由。

審査員

宇野亜喜良(イラストレーター)
大久保明子(装丁家)
鈴木成一(グラフィックデザイナー)
箭内道彦(クリエイティブディレクター)  
※敬称略・五十音順

応募作品の中から各審査員が上位3名を選出し、賞を決定。
受賞者による作品展を当ギャラリーにて行ないます。 (2013年2月)

応募人数  579名 
応募作品数 1711点

審査結果

宇野亜喜良賞/大森雅史(東京都)   
大久保明子賞/大地咲穂(千葉県)
鈴木成一賞/有延和磨(兵庫県) 
箭内道彦賞/agoera(東京都)

宇野亜喜良賞次点/本間紗代子(神奈川県) 松倉香子(東京都)
大久保明子賞次点/椎木彩子(東京都) 前田典子(神奈川県)
鈴木成一賞次点/岡本紘子(東京都) 杉原みゆき(東京都)
箭内道彦賞次点/有延和磨(兵庫県) 高良真秀(東京都) ※敬称略

■審査を終えて各審査員の声と最終選考対象者

宇野亜喜良賞 大森雅史(おおもり・まさし)
イラストレーションにとってキャンバスという素材は通常、絵画的な表現をしようという時に用いるが、そうではなくテクスチャーとして使っているのが面白かった。非常に整理されていて下描きの跡などの絵画的な痕跡がまったくなく、完成度の高いスタイルでキャンバスに定着させている。キャンバスのテクスチャーをうまく使って、掠れさせたりすることで中間の調子を用いずにトーンを出していて、黒白で製版したときに効果があるようなイラストレーション。そういう技術的なものと感覚的なものがデザイン的に造型されていて非常にセンスのいい人だなと思いました。
   
宇野亜喜良賞次点  
本間紗代子(ほんま・さよこ)  
少女マンガとかそういう文化の中から出て来たイラストレーションという感じがある。そういうものの様式化が上手で、コスプレ的なセンスというのか、無駄なことをせずに単純化されていてうまくまとめられている。描かれた六人の人物それぞれがスタイルが違っているところが面白かった。
   
松倉香子(まつくら・かおり)  
絵の具を塗ってムラのあるテクスチャーのなかで絵を描いているんだけれど、空間感覚が良いと思った。空きがいい。実際この絵を使うとなったときに、この外側も使うべきか切っちゃっていいのかADが苦労する感じ。外側の絵の具を塗ったところも味があって面白かった。普通だとこういうところは切って出品するんだろうけれど、このまま出しているところを見ると自分でも気に入っているのでしょう。女の子の想念というのか形而上学的というのか、頭のなかの世界を見るなかにもいろんな要素があって、そのモチーフの選び方が可愛いし、描き方、淡い色彩などに若い女性の、繊細さとクリエイティブを感じさせて非常に成功していると思う。
   

宇野亜喜良さん総評

実際見るまでどのような作品が集まっているか見当がつかなかったのですが、見せてもらうとそれぞれのスタイルが集まっていて面白かった。
審査員の好みにあわせて作戦を立ててくるようなこともなく、新鮮な作品がたくさんあって三人しか選べないのがつらかった。
今は出版物の装幀なんかでも漫画・劇画風なものも多い。そういう感覚で書かれた小説が増えているのか、それとも時代感覚としてああいうタッチの絵が今はどんな小説とも合うのか。僕にはイラストレーションはこういうものというイメージがないので、そんなことを考える。
僕たちはああいう絵を描いてこなかったけれど、これからはああいうものもイラストレーションになっていくんでしょう。
僕らの時代のイラストレーションというと、襟を正すというのか、真面目にきちんとしたものを描くというところがあったんだけれど、割合リラックスした落描きのようなラフな作品も多くて、それが面白かった。色んなスタイルが混在する今のイラストレーションの現状がよく出ているように思いました。

宇野亜喜良さん最終選考 
永井久美(埼玉県)、山室桂子(神奈川県)、相田智 之(東京都)、増井千晶(東京都)、池田彩香(東京 都)秦直也(兵庫県)、藤田佳菜子(大阪府)、谷口 綾(東京都)、タムラヨウイチ(北海道)、山路奈央 子、佐藤泰壱(沖縄県)、八幡萌花(埼玉県)、松井 美玖(愛知県)、畠山ゆり(東京都)

(宇野さんの審査のながれ 一次審査→二次審査→最 終選考)

 
大久保明子賞 大地咲穂(おおち・さきほ)
 
ほんかわした色調、とても可愛い女の子達、でも甘過ぎることはなく、背後の物語性も感じられました。画面の構成も上手です。
単純に私は好きです。
「仕事」という意味では、様々なモチーフに挑戦することも大事でしょうが、まずはこの自分の世界観を突きつめて、色んな人に認識してもらうといいと思います。
   
大久保明子賞次点  
椎木彩子(しいき・さいこ)  
提出されていた5点の絵のバランスが良く、色も綺麗で目立っていました。画面の中で細かく描くところと、抜くところの分け方が良く、人物の顔や体のラインもほどよいデフォルメ具合で、嫌な感じがなく味があると思います。
   
前田典子(まえだ・のりこ)  
チューリップの女の子の絵のDMが、もともと好きでデスクに飾っていました。見る人を惹き付ける力のある絵だと思います。
世界観はもう充分あるので、もうすこし普遍的なテーマを描いてみてもいいかも知れません。
普通の風景の中にいる人物を描いても、きっと素敵に描けると思います。
   

大久保明子さん総評

本の表紙に「人の顔」があると、ついつい目がいってしまうものです。
その分、それが好きな感じの絵じゃないと手にとってもらえない、実はかなり好き嫌いが出るモチーフかも知れません。
たくさんの「人の絵」をみながら、私もまずは本能的に「好き嫌い」で選ばせていただき、最初に残ったのは150人余り。
それだけたくさん好きな絵がありました。最終選考に残らなかった中にも、仕事でお願いしたい方もいました。
「人」は絵のモチーフとしては原点だと思うので、これからもたくさん描いて、たくさんの人に見てもらって下さい。
楽しい審査を有難うございました。


大久保明子さん最終選考 
早川世詩男(東京都)、庄子佳那(東京都)、岡本紘子(東京都)、大沢かずみ(東京都)、箕輪麻紀子(東京都)、玉川桜(東京都)、角南有紀(東京都)、後藤美月(東京都)、川村祐美(東京都)、加藤健介(東京都)、水谷有里(東京都)、agoera(東京都)、青木賢吾(東京都)、高野真樹子(東京都)、奥見伊代(兵庫県)、上坂じゅりこ(東京都)、荻原朋弥(東京都)、石井理恵(栃木県)、池田彩香(東京都)、井田やす代(東京都)、あべちほ(東京都)、大津ゆかり(東京都)、佐々木京介(神奈川県)、山本麻莉子(愛知県)、西村オコ(大阪府)、山路奈央子、佐藤桂輔(広島県)、稲波雅美(兵庫県)、辻恵(愛知県)、田口ヒロミ(兵庫県)

(大久保さん審査のながれ 一次審査→二次審査→最終選考)

 
鈴木成一賞 有延和磨(ありのべ・かずま)
 
イラストレーション世界からながめると、アニメやコミックのキャラ絵のほとんどは何かに描かされるてるような、言ってしまえば精彩のないものなんですが、この絵はそれらとはまったく別の、見た瞬間、引き込まれるような、強い力を感じました。おおげさかもしれないけど、おそらく、キャラ絵を通して、生きてる輝きとか、喜びとかが伝わるんだと思います。
   
鈴木成一賞次点  
岡本紘子(おかもと・ひろこ)  
女性の顔を黒く塗りつぶすという大胆さ。ただ不思議とネガティブなものは感じなかった。むしろこちらの想像力を喚起させるものがあります。まだ荒削りだけれどそれが逆にエネルギーとなっているのかな、骨太な力強さを感じた。
   
杉原みゆき(すぎはら・みゆき)  
ミシン画と思えない、表現としての自由さをしっかり自分のものにしていることに驚いた。この描きかたでしか表現し得ない、独特の切実さのようなものが気持ちよく響いてくる。髪の毛の表現がとても良い。女性は髪の毛だけでも表現出来たりしますが、そういう意味でもよかった。
   

鈴木成一さん総評

絵を描くということは、身も蓋もなく、ごまかしようのない自分を出すということ。 日頃思っていることや感動したこと、趣味や経験など、全てが絵になって出て来る。だからこそ自分がどういう人間なのか、しっかりと向き合って「私」を鍛えることが大切。それが出来ていない人の絵はやはり自分本位でしかない。 好きなものや譲れない気持ち、自分と徹底的に向き合うことで個性をきちっと人に伝わるものとして自覚できれば、それが絵に表れて説得力につながる。審査では「こうすれば良い」というものはなく、一番大切なのは驚かせてくれるかどうか。 ペーターズコンペでは毎年突拍子もない色々な絵が出て来て、新しいものに出会う感動があります。とても楽しかったです。

鈴木成一さん最終選考
田沢ケン(神奈川県)、庄野紘子(東京都)、後藤美月(東京都)、加藤健介(東京都)、正一(神奈川県)、青木賢吾(東京都)、荻原朋弥(東京都)、原倫子(東京都)、石井理恵(栃木県)、立花満(東京都)、池田彩香(東京都)、井田やす代(東京都)、谷端実(東京都、)小島有巳佳(千葉県)、山崎ゴリラ臭い(東京都)、ミヤタチカ(東京都)、荒井浩之(東京都)、大竹守(東京都)、鹿子木美(広島県)、綱田康平(京都府)、大森雅史(東京都)、北野泰子(北海道)、ミヤザキコウヘイ(東京都)、佐藤桂輔(広島県)、柴崎早智子(山形県)、辻恵(愛知県)

(鈴木さん審査のながれ 一次審査→二次審査→最終選考)

 
箭内道彦賞 agoera(あごえら)
 
光を描くために影を描くというのが絵の描き方の基本だけれど、この人は闇を描きたくて光を描いているところがすごくいいなと思った。人が浴びる影。
   
箭内道彦賞次点  
有延和磨(ありのべ・かずま)  
人間の感情がいいデフォルメのされ方をしているのがよかった。鳴り止まないロックンロールを感じました。
   
高良真秀(こうら・まさひで)  
デジカメで撮ったものをチェックしている絵、こういうモチーフは10年前までかんがえられなかった訳で永遠性はない。
それでも描かれることで普遍的な人間の可笑しさのようなものを感じさせるのが面白いと思った。愛すべき生物として。
   
 

箭内道彦さん総評

学生時代、イラストレーターになりたくて、だけど自分にしか描けない絵を最後まで見つけることができなかった僕にとって、この審査は、とても眩しい時間でした。人の魅力を絵にするためには、きっと描き手も魅力的でなくてはならない。そしてそれは対象によって増幅され続ける。たとえばイラストレーターたちが書くエッセイが秀逸なのも、同じ理由なんだと思います。

箭内道彦さん最終選考
山室桂子(神奈川県)、菱沼彩子(東京都)、庵原章子(東京都)、いしいなおこ(神奈川県)、井上百代(東京都)、倍井美帆(三重県)

(箭内さん審査のながれ 一次審査→二次審査→最終選考)

PATER'S Gallery COMPETITION 2012年度受賞者展
2013年2月8日(金) - 2月20日(水) 開催予定
ペーターズギャラリー 12:00〜19:00 木曜日定休

受賞作品の展示と、各審査員賞に選ばれた4名はあらたに描き下ろした作品も展示します。




© noriko sato

ペーターズギャラリーコンペ2012 作品募集要項

審査員 宇野亜喜良(イラストレーター)
大久保明子(装丁家)
鈴木成一(グラフィックデザイナー)
箭内道彦(クリエイティブディレクター)
【敬称略・五十音順】
応募作品の中から4人の審査員が各々上位3名を選出し、賞を決定。
受賞者による作品展を当ギャラリーにて行います。 (2013年2月中旬予定)
受付期間 2012年6月9日(土)〜6月20日(水)12:00〜19:00 木曜定休
※入賞者には7月12日までにご連絡します。
テーマ テーマ「人」。 人物を多く描いたイラストレーター・ペーター佐藤にちなんで、人物を題材にしたイラストレーションを募集します。
作品サイズ等 B3サイズ以下。 画材自由。 点数制限なし。
立体・半立体作品は保管の都合上、写真等でご応募下さい。
※折曲がりやすい作品は厚紙などの台紙に貼り、傷つきやすい作品の表面は透明のフィルム(アセテートフィルム等)をかけてください。 トレペ不可。 額装不可。
出品料

2点まで3,000円、3点目からは1点につき1,000円 (例:5点応募の場合、計6,000円)、郵送搬入の方は無記名の定額小為替証書もしくは普通為替(郵便局で購入可能)で作品と共にお送りください。
直接搬入の方はギャラリー受付にて現金でお支払いください。 
※応募者の都合による出品料の返金は致しません。

搬入搬出 上記の受付期間中に作品を、ペーターズギャラリーに直接搬入または搬送して下さい。郵送返却の方は返送先を記入した「着払い宅配伝票貼付の返送用封筒」または「切手貼付の返送用封筒」を同封して下さい。 直接搬出の方は7月20日〜7月31日(12:00〜19:00/木定休) の間に取りに来てください。
※搬出期間を過ぎた作品はお預かりできません。 搬出日に来られない方は必ずご連絡ください。
※作品の扱いには十分気をつけますが、万一破損・紛失した場合はご容赦願います。
応募先/お問合せ ペーターズショップ アンド ギャラリー
〒150-0001東京都渋谷区神宮前2-31-18
12:00〜19:00/木曜定休(ただし受付期間中の木曜日はオープン) 
Tel:03(3475)4947
Fax:03(3408)5127
mail:patersato@paters.co.jp
応募用紙はコチラをプリントアウトしてご利用ください。

■審査員プロフィール

宇野亜喜良(うの・あきら)

イラストレーター。
1934年名古屋生まれ。名古屋市立工芸高校図案科卒業。カルピス食品工業、日本デザインセンター、スタジオ・イルフイルを経てフリー。日宣美特選、日宣美会員賞、講談社出版文化賞さしえ賞、日本絵本賞等を受賞。1999年紫綬褒章、2010年旭日小綬章受章。 主な作品に「宇野亜喜良60年代ポスター集」「MONO AQUIRAX +」「奥の横道」、絵本に「あのこ」(今江祥智・文)「白猫亭」「上海異人娼館」(寺山修司・原作)、など多数。 キュレーターや舞台美術も手がける。TIS会員。
「新鮮な表現の作品に出会いたいと思っています。描きたいこと、やりたいことを十二分に発揮して下さい。楽しみにしているのですから・・・・。」

 
大久保明子(おおくぼ・あきこ)

装丁家。
1971年埼玉県生まれ。
多摩美術大学デザイン科グラフィックデザイン専攻卒業後、文藝春秋デザイン部に入社。
書籍の装丁を主に手がける。
第38回講談社出版文化賞ブックデザイン賞受賞。
「この人と仕事がしたい!」と思わせてくれる絵に出会えるのを期待しています。楽しみです。

 
鈴木成一(すずき・せいいち) グラフィックデザイナー。
1962年北海道生まれ。筑波大学芸術研究科修士課程中退後、1985年よりフリーに。
1992年(有)鈴木成一デザイン室設立。1994年講談社出版文化賞ブックデザイン賞受賞。
エディトリアルデザインを主として現在に至る。
「心ときめくようなイラストレーションを期待します。」
 
箭内道彦(やない・みちひこ) クリエイティブディレクター。
1964年福島県生まれ。東京藝術大学美術学部卒業。博報堂を経て、2003年「風とロック」を設立。タワーレコード「NO MUSIC,NO LIFE.」、リクルート ゼクシィ「Get Old with Me.」、東京メトロ「TOKYO HEART」「TOKYO WONDERGROUND」、サントリー「ほろよい」など話題の広告を数多く手がける。フリーペーパー『月刊 風とロック』発行人。


■ ペーターズギャラリーコンペ受賞者を訪ねて
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