ペーターズギャラリーコンペ2023審査結果のお知らせ

ペーターズギャラリーコンペ2023にご応募頂いた皆様 ありがとうございました。
審査の結果をご報告します。

テーマ「人」。人物を題材にしたイラストレーション。
サイズ B3サイズまで。点数制限なし、画材自由。

審査員

佐藤直樹(デザイナー/画家 )
スージー甘金(マンガイラストレーター)
南伸坊(イラストレーター)
【敬称略・五十音順】

応募作品の中から各審査員が上位3名を選出し、賞を決定。
受賞者による作品展を当ギャラリーにて行ないます。(2024年2月)

応募人数  206名
応募作品数 688点

審査結果

佐藤直樹賞/いおり(東京都)
スージー甘金賞/おふみ(東京都)
南伸坊賞/長洲忠(神奈川県)

佐藤直樹賞次点/おくまゆみ(神奈川県)はまぎしかなえ(京都府)
スージー甘金賞次点/太田マリコ(東京都)関 美希奈(東京都)
南伸坊賞次点/太田マリコ(東京都)藤田ユウスケ(ふじみ屋) (埼玉県)

※敬称略

■審査を終えて各審査員の声と最終選考対象者

佐藤直樹賞 いおり(いおり)

次点の二人と比べると未知数の作品ですが、このようなモチーフと表現を素の手描きで仕上げている点、しかもところどころの失敗の痕跡も含め、ほとんど倒錯的とも言える反時代性すら感じ、今の表現者が見失いがちな、単独者の「強度」として受け止めました。

【受賞者展に向けてのアドバイス】
大賞とした理由は「さらなる新作が見てみたい」の一言に尽きます。同じ輪郭を縛りとして内側を異なる方法で描き分けているのだと思いますが、何ならそこは外してもらってもいいかもしれません。「人」に見えさえすれば。

   
佐藤直樹賞次点  
おくまゆみ(おく・まゆみ)  
すでに独自の世界を確立されている方だと思います。アートとイラストレーションの間に存在する、マージナルな魅力を感じます。表現のための活動領域をいくらでも広げて行ってほしいです。
   
はまぎしかなえ(はまぎし・かなえ)  
まだまだ新しい世界を広げられるだけの力を秘めた方だと思われます。今っぽくまとめ過ぎることなく、時に逸脱しても時間をかけて開拓を重ねて行けば、さらに辿り着ける場所がある気がします。
   

佐藤直樹さん総評

「人物を題材にしたイラストレーション」ということで言うと、今の時代の中で十分に通用するだろうと思われる作品が他に複数ありました。しかし、すでにある様式に則ったもののようにも感じられてしまったため、個人的に残しませんでした。一定の様式に則ることはイラストレーションとして正しいので、こちらの選考の方がおかしい気もします。一方、何かのキッカケがあったら大化けするかもしれないと思われるような不思議な魅力を感じた作品もいくつかありましたが、時代に背を向けたままではイラストレーションになり得ませんから、それらも最後までは残しませんでした。思った以上に多くの人が幅広く試行錯誤していることが印象的な審査で、そこに新鮮な驚きがありました。

佐藤直樹さん最終選考
最終選考者…すぎもりえり 井上知也 金丸知樹 マナベレオ 牧角春那 日向野由美子 菅原さこ mado(東京都)、わたなべももこ 竹内薫 鹿野里美 (神奈川県)、ひろせまな(愛知県)、洞智子(滋賀県)、ひ炎(大阪府)

(佐藤直樹さんの審査のながれ 1次審査→2次審査→最終選考)


 
スージー甘金賞 おふみ(おふみ)

自分独自の世界観を確立してますね。色、フォルム、シュチュエーションの選び方…。それらが統合された時に絵から出る雰囲気が好きです。 こういうコンペですと、人物、背景、テーマ等を絞り込んで、提出した方がわかりやすいのですが、おふみさんは1枚1枚違った感じのもの(でも全作品に統一感はある)を提出してきて逆に新鮮でした。 このままGoing my way ! で行ってください。

【受賞者展に向けてのアドバイス】
今まで描いていない物で、描いてみたい物があれば、それを今のテイストで自分流に描くと良いと思います。常に、自分の直感を信じて!

   
スージー甘金賞次点  
太田マリコ(おおた・まりこ)  
ワークマンの世界。粗雑なタッチが今、逆に魅力的!グレートーンにオレンジの配色が洒落てます。太田さんの絵はなんとなく和みます。昔から、反復や繰り返しは『笑い』を誘うと言われてますが(誰が言ったかは不明)その辺計算してるか、利用してるかはわかりませんが、太田さんの絵を見ていると、知らず知らずのうちに、まんまと和んでしまってる自分に気づくわけです。口惜しい!でもサイコー!
   
関 美希奈(せき・みきな)  
まず、象足の女の子の絵にハートをワシづかみにされました。コラージュ・ドローイング? ドローイング・コラージュ??? と、よくわかりませんが、たぶん当初は無理矢理はめ込んだんでしょうけど、そのあと、意外と周りと馴染んじゃってるんですね。その辺がすごい! 基本、人物の入った、どうってことのないワンシーンなのですが、白スペースと遠近法を上手く使っていて、時間さえも感じさせる四次元イラストレーションになってます。アメイジング! 相当のテクニシャンです。
   

スージー甘金さん総評


色々なタイプの絵を見ることができて楽しめました。 面白かったです。皆さん平均して絵のレベルは高いと思います。 イラストレーションは絵の一種だと思いますが、普通の絵と違うのは コミュニケーションする絵ということだと思います。 なので、コミュニケーション力ということが大事になります。 となるとコミュニケーション力ってどうやってパワーアップするの? ということになるのですが、コミュニケーションのとり方は人によって違うし、一言では片付けられないので、それは皆さんへの今後の課題にさせていただくことにします。 今後の制作にあたって、皆さんの好きな色で、好きな画材で、好きな線で、好きなテーマで…いっぱい描いていってください。ただ、今、描いている絵で コミュニケーションするということを忘れずに。

スージー甘金さん最終選考
最終選考者…Kouchill 平野順乃(千葉県)、ニシザキ (埼玉県)、NIHONBARE 鹿野里美 やまもとようこ(神奈川県)、橋本浩子(愛媛県)

(スージー甘金さん審査のながれ 1次審査→2次審査→最終選考)

 
南伸坊賞 長洲忠(ながす・ただし)

 長洲忠さん大賞おめでとうございます。キレイなイラストレーション、上手なイラストレーションは、正直に言って他にもありました。私が長州忠さんを大賞に選んだのはその「企み」に反応したからです。 「昭和戦前」に目をつけるというアイデア。少なくとも、私には効きました。別にこの時代の風俗に興味を持っていたワケではありません。むしろまるで無関心であって、虚をつかれた。新鮮でした。イラストレーターはA I人工知能の上を行かないとダメです。

【受賞者展に向けてのアドバイス】
 昭和戦前の日本画とか、着物の柄のデザインとかには、いまのイラストレーションのアイデアとは違うタイプのアイデアがあります。広告マッチのデザインとか、襦袢の柄のセンスとか、絵はがきや、雑誌やポスターのアイデアとか、けっこう突拍子もないものがあります。そいうものを取り込むのもいいし、直接取り込まずとも、アイデアの構造を参考にすることはできるでしょう。とにかく、今の時代に「新鮮」に感じられるのがネライです。

   
南伸坊賞次点  
太田マリコ(おおた・まりこ)  
 あるいはマリコさんが、個人的にレンジャー部隊とか消防隊員が「好き」という可能性もあるし、それはそれでいいんですが、私は「コンペに応募するにあたって、このテーマに絞って複数点まとめて送ってこられた」イラストレーターとしてのセンスにやられました。統一感があり、バラエティに富み、技倆も、味わいも、伝わる。イラストレーターには編集者やプロデューサー、ディレクターの能力も必要だ。マリコさんにはそれがあります。
   
藤田ユウスケ(ふじみ屋)(ふじた・ゆうすけ(ふじみや))  
 ユウスケさんの絵は、肩の力が抜けていて、見る人をのんびりさせる長所があります。殊更に意図する風でもなく、たんたんとしていて、しかもほんのり楽しい。最近、発見したんですがモーリス・ユトリロに、いわゆる有名な油絵の風景画とはちょっと違った、スケッチ風の気軽な感じのリトグラフがあります。ちょうどユウスケさんのイラストレーションの味と似通った感じです。向島のユトリロって名乗ってもいいくらいだと私は思う。
   

南伸坊さん総評

 今、イラストレーターになる。なって、バリバリ仕事をこなすというのは、きびしい時代だと思います。さらにきびしさは増していくでしょう。あいかわらず、フツーの人々はキレイで上手な絵を好きだろうし、それから慣れ親しんだマンガやアニメの絵も好きでしょう。でもイラストレーターは、そこに新しいイメージをつけ加えないといけない。さらにAIも絵を描くようになりました。
A I人工知能に描けない絵ってなんだろう?これを考えるのが「ヒント」じゃないか?と私は思ってます。

南伸坊さん最終選考
最終選考者…友澤健 NATUMI まえじまふみえ くしだちゅろう すぎもりえり 山賀千フィーロ Chigabee 日向野由美子 古川ゆめの tomoss (東京都)、NIHONBARE 近藤弥生(神奈川県)、山田浦 (埼玉県)、足立ゆうじ(愛知県)、洞智子(滋賀県)、はまぎしかなえ(京都府)、金本磨美(兵庫県)、たむらみか(広島県)

(南伸坊さん審査のながれ 1次審査→最終選考)


 


© Ai Shinomiya

■審査員プロフィール

佐藤直樹(デザイナー/画家)

1961年東京都生まれ。北海道教育大学卒業後、信州大学で教育社会学・言語社会学を学ぶ。美学校菊畑茂久馬絵画教場修了。 1994年、『WIRED』日本版創刊アートディレクター。 1998年、アジール・デザイン(現アジール)設立。サンフランシスコ近代美術館パーマネントコレクションほか国内外で受賞多数。東京ビエンナーレ・クリエイティブディレクター。3331デザインディレクター。多摩美術大学グラフィックデザイン学科教授/芸術人類学研究所員。

「イラストレーションではあっても絵は絵という絵が見たいです。あるいは絵だけどイラストレーションにもなるんだ?みたいな。」

 
スージー甘金(マンガイラストレーター)

1956年東京生まれ。
80年代より多くの雑誌や広告媒体やレコード・CDジャケットにイラストを提供。同時に多摩美術大学、京都精華大学、他沢山の専門学校で講師を歴任する。
個展も多数。フキダシやキャラなどのマンガ的要素や現代アートのモチーフを徹底的に引用した諧謔的作風は、後進の作家に多くの影響を与えている。著書に塗COMIX/音楽出版社など。わかりやすい代表作は電気グルーヴのロゴ。

「心ときめく作品お待ちしております。」

 
南伸坊(イラストレーター)

1947年東京生まれ。月刊漫画『ガロ』編集長を経て、イラストレーター、装丁デザイナー、エッセイスト。
著書に『のんき図画』『ねこはい』『笑う漱石』『私のイラストレーション』『あっという間』共著に糸井重里氏との対談本『黄昏』伊野孝行氏との対談本『いい絵だな』などがある。

「画家のクマガイモリカズは、絵というのは「自分を出して、自分を生かすしかない。自分にないものを無理に何とかしようとしてもロクなことになりません」といってます。
ボク自身も「そうなんだよな」と思いますが、でも、「もうちょっと上手く描きたいとか思うのも人情だよな」とも思うんです。いろいろやった上で、そういう境地になれたらいいな、というところでしょうか。つまりは「自信をもて」ということでしょうが「それができるならもう自信もってるでしょ」ということでもありますよね。」



■ ペーターズギャラリーコンペ受賞者を訪ねて
過去のコンペ受賞者の活動をご紹介しています。

 
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