ペーターズギャラリーコンペ2015 受賞者のお知らせ

ペーターズギャラリーコンペ2015にご応募頂いた皆様 ありがとうございました。
審査の結果をご報告します。

テーマ「人」。人物を題材にしたイラストレーショ ン。
サイズ B3サイズまで。点数制限なし、画材自由。

審査員

鈴木成一(グラフィックデザイナー)
高橋キンタロー(イラストレーター)
谷口広樹(グラフィックデザインのできる絵描き)
長崎訓子(イラストレーター)
【敬称略・五十音順】

応募作品の中から各審査員が上位3名を選出し、賞を決定。
受賞者による作品展を当ギャラリーにて行ないます。 (2016年2月)

応募人数  418名
応募作品数 1251点

審査結果

鈴木成一賞/原けい(東京都)
高橋キンタロー賞/マスダカルシ(静岡)
谷口広樹賞/豊田直子(福岡県)
長崎訓子賞/鰹とニメイ(千葉県)

鈴木成一賞次点/サイトウマスミ(東京都) 西山寛紀(東京都)
高橋キンタロー賞次点/高杉千明(千葉県) 谷地田圭(神奈川県)
谷口広樹賞次点/竹浪音羽(東京都) 遊(東京都)
長崎訓子賞次点/タムラガク(東京都) 原けい(東京都)
※敬称略

■審査を終えて各審査員の声と最終選考対象者

鈴木成一賞 原けい(はら・けい)
いままで見たことのない、空気感にヤラレました。
情緒を排したそれは、硬く澄んで胸の透くようです。
   
鈴木成一賞次点  
サイトウマスミ(さいとう・ますみ)  
リアルを描いているのに、あくまで表面的であるのが魅力です。
より一層のフォルムの探求が、さらなる可能性に繋がると確信します。
   
西山寛紀(にしやま・ひろき)  
絵画を積極的に、また正確にデザインしたイラストレーションです。
その潔さがまったく小気味良い。
いろいろな感情をここから見てみたい。
   

鈴木成一さん総評

全体としてインターネット隆盛の時世のせいか、質量ともにやや失速気味の感は否めない。
受賞者の選出のみにとどまらず、この賞自体を積極的に世に知らせていく必要性を痛感します。
またアカデミズムを擁護する気などさらさらありませんが、過度な個人主義への傾倒も感ずところです。
イラストレーションが目的を伴った道具であるなら、相応の客観性も表現者に求められてしかるべきではないでしょうか。

鈴木成一さん最終選考
最終選考者…石黒万友佳、木原まさやす、早川世詩男、星野ちいこ、茂苅恵(以上東京都)、原口祥絵(群馬県)、西村オコ(大阪県)

(鈴木成一さんの審査のながれ 一次審査→二次審査→最終選考)


 
高橋キンタロー賞 マスダカルシ(ますだ・かるし)
 

人物のイメージを追う作品が並ぶ中でうっかり見落としそうになりましたが、素敵な作品に出会えました。新しい表現ということではないかもしれませんが、びっくりするほど繊細なコラージュで描かれている世界の隅々まで魅力に溢れ、ユーモアで独特のセンスを見せる人物や動物のシルエットだけでなく小さな葉っぱ一枚からも可愛いセリフが聞こえてきそうです。そのセリフは用意されたものではなく見る人それぞれの物語、いつまでも飽きることがありません。

大変な作業と思いますが、画面のどこを切り取っても成立する抜群のバランス感覚もすごいですね。ストーリー表現のみならず、立体や映像、ファブリックからステーショナリーまで展開が可能じゃないでしょうか。

   
高橋キンタロー賞次点  
高杉千明(たかすぎ・ちあき)  
誠実な表現が心に残ります。
モチーフもスタイルも昭和テイストですが、ポイントはさりげない瞬間に目を向ける優しさと品の良さです。人物でも風景でも、あるいは手にしているカップでもいいかもしれません、時代センスにとらわれず今を切り取る表現も期待します。
   
谷地田圭(やちだ・けい)  
大変な表現力と確かな意識を感じます。
好みが分かれることを承知での、一部の人を寄せ付けない潔さにも惹かれます。じつはこういう表現こそコマーシャルにも成り得ると思います。
この作家の5年後、10年後を知りたいですが、この表現のフィールドは「世界」です。このまま一気に海外に出よう。
   

高橋キンタローさん総評

スタイルや経験、テクニックを問わず、潜在的にインパクトや新鮮さを求めていますが、総じて感じたのはセンスの良さでした。作品そのものではなくて作者の生活や指向を想像させる感覚。うらやましいくらいですが、不思議なことに自分の手から離れないところの評価でもあり、そのことが類似感を生んでいるようにも感じます。とても魅力を感じるのに、点数が少なかったり表現のばらつきがあるものはまだ偶然性にまかせた「過程」なのかなと思います。その点で絞り込んだ3作品については確かなものが届くという意味でほとんど迷いがありませんでした。作家が自分の表現を楽しんでいることがわかる、それは「出会い」にも通じる感覚です。
それから絵の具/線画、共通して平ぺったい顔に大きな目のキャラクターが目立ちました。面白いとも思うし、新鮮であるはずの表現ですが、すでに既視感を感じます。キャラクターを持つというのは強さですが、本当にその人の表現なのか。キャラクターから入るとかえって自分を縛ることになるかもしれません。自分にあるのは好奇心だけなので、本来選ぶとか評価するという意識がありません。どの作品でもどこかに魅力を見つけてしまうので大変でした、ぼくにとっては戸惑いまで魅力だから(笑)作品としての魅力だけではなく、前を向くエネルギーからは本当に希望をもらいました。「今」だけでなく「先」を感じる作品がたくさんある。すべての作品に継続を期待します。

高橋キンタローさん最終選考
最終選考者…オオヒロヨーコ、おぎわら朋弥、北沢あつこ、京極あや、笹岡るい、星野ちいこ(以上東京都)、竹内遥世(長野県)、たしまゆみ(福岡県)

(高橋キンタローさん審査のながれ 一次審査→二次審査→最終選考)

 
谷口広樹賞 豊田直子(とよた・なおこ)
 
木版画によるデリケートな表情を持った素敵な作品だ。人物は控えめで、一見したところ人物をテーマにしたとは思えない、どちらかというと風景画のような絵だ。版木の持つ木目が儚くも美しいマチエールとなって、一瞬脆弱ながら、しばらくすると肌理がじわじわっと際立ってくる。肝心の人物と言えば、用済みのマッチ棒のような男女が描かれている。しかし、男は男の、女は女のフォルムがきちんと与えられており、まるでアダムとイヴが日本の海岸線に降り立ったようななんとも不思議な魅力を持った作品だ。この調子でどんどん描いていっていただきたい。
   
谷口広樹次点  
竹浪音羽(たけなみ・おとは)  
大胆な構図が造形的で絵画の匂いがする。色数を抑えた彩色がまたユニークな印象を与え、不思議なセンスを感じさせる。応募された作品の人物たちのほとんどが画面からはみ出し、そうした作り方が絵画的な何かを増長させる。また、断片的で言葉を排しているようで、実は文学的な香りも漂っている。何気なく調べてみると、もっと面白い人物も描いている。だからきっとだいじょうぶなのだろうが、竹浪氏の覚悟次第で今後の活躍が決まるだろう。個人的には、イラストレーションを鼻であしらうような気質でいて欲しい。
   
遊(ゆう)  
私が挙げた三人の内、最も人物がしっかりしている作家だ。全体にはムンクの風景画のような暗さがよく、湿り気のある描法がそれをしっかりとサポートしている。映画のワンシーンを切り取ったような作品は、異常を日常のオブラートで包むような感じで、それぞれにストーリーを感じさせる魅惑的な作品だ。色彩の中に少し反対色といったものを取り入れて行くと、冴えが違ってくると思うし、どこかしっかり描写する箇所があると、作品に締まりが出てくると思う。
   

谷口広樹さん総評

イラストレーションの仕事で人物を描くことをほとんどしない私が審査員をすることで、人物というテーマにあまり積極的でない人たちが応募して来たとしたら、このコンペの意味は薄れてしまうのだろうかと時折そんなことを心配しながら審査に当たっていた。プロであるから人物は描けなくはないのだが、気に入ったものがそうそうできるものではない。それだから人物を積極的に仕事にして来なかった。満足な人を描くのはむずかしい。だから、このコンペに応募してくる人たちの描く人物はどんなものかと期待しながら審査を楽しみにやって来たが、ああ、いいねぇと吸い込まれそうな作品はなかったと言っても過言ではない。魂の入っていない人形のようで、血の通ってない無表情なものが多く、リアリティのない人物ばかりが目立った。人物の面白さはその性格が垣間見えることだと思う。描かれた人物の気持ちに観る者が気持ちを重ねることができたら素敵だ。いろいろと言ってはいるが、それでも全体としては、「今」や「これから」を感じる作品も多く、審査そのものは充分楽しむことができた。人物というテーマは、まだまだ可能性がある。もっともっと興味深い人物が出現するはずだ。

谷口広樹さん最終選考
最終選考者…平野百百子、山浦のどか、(以上東京都)、そらみずほ(神奈川県)、anata(大阪)、たしまゆみ(福岡県)

(谷口広樹さん審査のながれ 一次審査→二次審査→三次審査→最終選考)


 
長崎訓子賞 鰹とニメイ(かつおとにめい)
 
空間の捉え方と人物の関係性が気持ちよかった。
日常によりそう非日常…のような、白昼夢的にも見える風景のパースが私好みでした。
   
長崎訓子賞次点  
タムラガク(たむら・がく)  
二枚しか無かったのでよくわからないけれど、フォルムの捉え方が良かった。元ネタ(写真?)と距離を置いて欲しいところもあり、少々あやうい感じも。ぜひたくさん描いていってください。
   
原けい(はら・けい)  
上品で、全体的に寂しげな佇まいが良かった。とはいえ、もうすこし自分にしかない視点や感情のようなものを盛り込んでもいいのかな…とも思います。
   
 
長崎訓子さん総評

最終選考まで残った人たちは、ほぼ同じレベルだったと思います。全員並べて展示をしたいくらい。反対に「これ!」という突出した人はいなかったので、良くも悪くも…なのかもしれないです。
選考にもれてしまった作品は「人」ってこういう感じでしょ?「イラストレーション」ってこうだよね?、と形式に捕われている印象を受けました。

長崎訓子さん最終選考
最終選考者…太田麻衣子、竹浪音羽、谷口正造、玉川桜、遊、(以上東京都)、永井静玲菜、山手澄香(以上神奈川県)加藤麻衣、(千葉県)、瀬川綺羅(北海道)、三文(長崎県)

(長崎訓子さん審査のながれ 一次審査→二次審査→最終 選考)


PATER'S Gallery COMPETITION 2015年度受賞者展
2016年2月5日(金) - 2月17日(水) 開催予定
ペーターズギャラリー 12:00〜19:00 木曜日定休
受賞作品の展示と、各審査員賞に選ばれた4名はあらたに描き下ろした作品も展示します。




© yuko tateyama

ペーターズギャラリーコンペ2015 作品募集要項

審査員

鈴木成一(グラフィックデザイナー)
高橋キンタロー(イラストレーター)
谷口広樹(グラフィックデザインのできる絵描き)
長崎訓子(イラストレーター)
【敬称略・五十音順】

応募作品の中から4人の審査員が各々上位3名を選出し、賞を決定。
受賞者による作品展を当ギャラリーにて行います。(2016年2月中旬予定)
受付期間 2015年6月6日(土)〜6月17日(水)12:00〜19:00 木曜定休
※入賞者には7月9日までにご連絡します。
テーマ テーマ「人」。 人物を多く描いたイラストレーター・ペーター佐藤にちなんで、人物を題材にしたイラストレーションを募集します。
作品サイズ等 B3サイズ以下。 画材自由。 点数制限なし。
立体・半立体作品は保管の都合上、写真等でご応募下さい。
※折曲がりやすい作品は厚紙などの台紙に貼り、傷つきやすい作品の表面は透明のフィルム(アセテートフィルム等)をかけてください。 トレペ不可。 額装不可。
出品料

2点まで3,000円、3点目からは1点につき1,000円 (例:5点応募の場合、計6,000円)、郵送搬入の方は無記名の定額小為替証書もしくは普通為替(郵便局で購入可能)で作品と共にお送りください。
直接搬入の方はギャラリー受付にて現金でお支払いください。 
※応募者の都合による出品料の返金は致しません。

搬入搬出 上記の受付期間中に作品を、ペーターズギャラリーに直接搬入または搬送して下さい。郵送返却の方は返送先を記入した「着払い宅配伝票貼付の返送用封筒」または「切手貼付の返送用封筒」を同封して下さい。 直接搬出の方は7月18日〜7月31日(12:00〜19:00/木定休) の間に取りに来てください。
※搬出期間を過ぎた作品はお預かりできません。 搬出日に来られない方は必ずご連絡ください。
※作品の扱いには十分気をつけますが、万一破損・紛失した場合はご容赦願います。
応募先/お問合せ ペーターズショップ アンド ギャラリー
〒150-0001東京都渋谷区神宮前2-31-18
12:00〜19:00
Tel:03(3475)4947
Fax:03(3408)5127
mail:patersato@paters.co.jp
応募用紙はコチラをプリントアウトしてご利用ください。

■審査員プロフィール

鈴木成一(すずき・せいいち)
グラフィックデザイナー

1962年北海道生まれ。筑波大学芸術研究科修士課程中退後、1985年よりフリーに。1992年(有)鈴木成一デザイン室設立。1994年講談社出版文化賞ブックデザイン賞受賞。エディトリアルデザインを主として現在に至る。
「鈴木成一装丁イラストレーション塾」講師。
著書に『装丁を語る。』『デザイン室』(いずれもイースト・プレス刊)。

「ビックリさせてくれるような才能に期待します。」

 
高橋キンタロー(たかはし・きんたろー)
イラストレーター

多摩美術大学グラフィックデザイン科卒業後フリー。各種広告、エディトリアル、パッケージなどの他、P-kies等のアニメーション。
80〜90年代にはHIT STUDIO名義で多数のカルチャー誌やファッション誌のADも担当。イベントや展示のキューレーションも続けています。
各種海外コンサート企画にも関わっています、自身もアート系ノイズバンドOBANDOSのメンバーにてサマソニ他、各種イベントに出演。

「魅力あるものへの出会いがあるから生きていける。
たくさんの新しい表現に出会えることを楽しみにしています。」

 
谷口広樹(たにぐち・ひろき)
グラフィックデザインのできる絵描き
'57年生まれ。'83年東京藝術大学大学院美術研究科修了。日本橋高島屋宣伝部(現在ATA)を経て、'85年bise inc.を設立し、現在に至る。東京工芸大学主任教授。イラストレーション、絵画、グラフィックデザインの他、ジャンル、カテゴリーにこだわらずに絵画思考を核とした独自の世界観を展開。メディア上ではもちろんのこと、ギャラリーにおいてオリジナルを発表することを活発に行っている。

「既存の社会が完成されていると思うな。迎合することなく自由に制作したものを観たい。あなたが「いい!」と信じるものを応募してください。」
 
長崎訓子(ながさき・くにこ)
イラストレーター

1970年東京都生まれ。多摩美術大学染織デザイン専攻卒業。
書籍の装画や挿絵、刺繍の図案、映画に関するエッセイなど多方面で活動中。
作品集『COLLAGES』『Ebony and Irony 短編文学漫画集』ほか。
www.platinum-s.com

「人物を描くということは、そのまわりの空気を描くことだと思いながら作品拝見します!」



■ ペーターズギャラリーコンペ受賞者を訪ねて
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